【晩春】今が見頃キャンベラの風光明媚なおすすめ観光地2選
紫のひともとゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る
古今集・雑上・読人しらず
訳注)紫草ゆえの武蔵野の草への愛着という形で、大切な一人の人に連なる人たちへの思いを詠んだ歌。『源氏物語』で、光源氏が藤壺の宮と血のつながる紫の上を愛するのは、この「紫のゆかり」という思想の代表的な結実。(出典:新版古今和歌集 現代語訳付き 高田祐彦=訳注)
紫が高貴な色とされたその時代、白い花をもちながらも根からは美しい紫色の染料がとれる紫草は崇高で尊いものとされていたとか。
その紫を慈しむ心が、紫草と同じ土地に生える草へと広がり、同様に心惹かれるようになるという比喩表現を用いて、愛するものとその親戚への愛情派生として捉えられてきた歌があるように、
キャンベラ駐在後、まもなく訪れた、これからご紹介する場所をみた瞬間、こんなにも素晴らしいものをもつキャンベラは魅力的なところで溢れているに違いないと感じたことを今でも思い出します。
ここから、大地に広がる緑のパレットに華を添える色とりどりのドット、そんな素朴さが生み出す心の豊かさ、創造性で溢れる“静かに活気的”なキャンベラに対する愛着心へと繋がっていったのかもしれません。
そんな美しい場所を最初に訪れなければ、きっと何の特徴もない自然しかないつまらない場所で終わってしまっていたかもしれないオーストラリアの首都、キャンベラ。ぜひ、季節がきたら最初に訪れていただきたい、キャンベラ全体が愛おしくなるような、私にとっての「紫」をご紹介いたします。
Old Parliament House
紫色の魔力が開花する10月
空間に漂うベールにそっと入って覗いた瞬間、ふわっ〜と優しく広がる藤の香りと共に目を覆うのは、淡く上品な紫色。
はぁ、ここはティンカーベルしか存在しない夢の庭園ですか、と思わず尋ねたくなる。
まるで異次元の秘密の森の中を、妖精と共に浮遊しているような陶酔感に浸れる世界。そう、ここには鬼は近づけないのである。←鬼滅の刃 へへ
そんな場所があるのは、キャンベラOld Parliament House 旧国会議事堂の庭園。
最初にご紹介した和歌に出てくる紫は、視覚的な紫というよりも、その価値から生み出されたものですが、紫という染料が高貴な存在であったように、紫には魅惑的で人の心を一瞬で奪ってしまう魔力があると思うのです。
そして、キャンベラにもそんな魔術に思わず引き込まれてしまいそうになる、美しい場所が桜の見頃が終わる10月にやってきます。
10月中旬、友人ご夫婦と一緒に訪れたときには、満開のピークを迎えていました。
旧国会議事堂を挟む東西の庭
旧国会議事堂の東西に分かれるお庭で、それぞれ豪華な藤棚が見られます。朝7時からの開園中、無料で一般公開されています。
西側には、テニスコートやローズガーデンのある、Senate Gardens
東側には、噴水にテニスコート、2つのローズガーデンがある、House of Representatives Gardens
この旧国会議事堂を挟んだ両側二箇所のガーデンに分かれており、どちらも藤棚が楽しめます。
どちらの藤も圧巻ですが、セネートガーデンの方が小さいだけあり密度があって、画像に収めるとより豪華な雰囲気が伝わります。
薔薇の開花はまだですが、周囲にローズガーデンや芝生が広がり、お天気の日には最高に気持ちのよい週末が送れること間違いなしです。
ピクニックを楽しむカップルも。イベントやファンクションで利用されることも多く、この日は、東側では貸切でピクニックを楽しむご家族もいらっしゃいました。(予約と貸切料必要)
ただ、週末の、藤の満開の時期でも全く混んでいないというのが、穏やかなキャンベラの魅力でもあります。
夫のシャツが藤に馴染んでいる♡
今が見頃、芳しく咲き誇る藤の花の放つ、魅惑のベールに包まれる。その余韻はきっとキャンベラの魅力となって長い間、あなたの心にも刻まれることでしょう。
Gibraltar Falls
雨が続く11月の晴れ間には
もう一つご紹介したいのは、これからやってくる、基本的に乾燥しているキャンベラでも一年で最も高い降雨量を記録する11月に訪れたい美しい場所。
雨の夜、心地よく響く1/fのゆらぎに癒されながら、眠りにつくのも好きですが、そんな雨続きの日しばらくしてからやってくる壮大な滝を見に、外へ出るのもお忘れなく。
自然音にヒーリング効果があることはよく知られていますが、ここ数年では自然音の中でも特に、水の流れる音は健康促進と気持ちを前向きにさせる効果があるという研究報告があります。
暗く憂鬱になりがちな梅雨シーズン、滝のエネルギーを吸収して、訪れたあとには、すっきり笑顔にさせてくれる場所で休憩してみるのもいいですね。
滝の場所と魅力
キャンベラの中心から車で約45分、南下したところにあるGibraltar Falls。ここからもう少し北に上ったところには、元気いっぱいのコアラが見られるTidbinbilla自然公園があります。車で約10分の距離のため、両方セットで訪れるのもおすすめです。
ハイキングというよりも、駐車場から滝まで歩いて2km程という、滝に癒されにパッと行って帰ってこられる場所。
ちなみに手すり付きの階段で降りると滝を眺めるスポットに到着しますが、車椅子の方には優しい仕様にはなっていないのが残念なところ。
駐車場隣には、小さなピクニックエリアとお手洗いも併設しています。滝を見ると尿意を催すなんていう素直な方にはありがたいですね。
落差50mの滝を正面上方から眺める形ですが、こんなに間近で、滝を浴びるような迫力を味わえるのも嬉しいポイント。流れ落ちる様子がなんともエレガントな滝です。
ちょっと穏やかな日も、それはそれで素敵なんです。
12月以降夏の楽しみ方
夏の暖かい日には、トップにある自然のプールを楽しむ方で賑わいます。深いところで大人の腰程度の浅さ、水は透き通っており、底は、荒めの砂や石で敷き詰められています。
基本的に水は冷たいので、夏になってから水着着用でぜひ。泳ぐ程のスペースはないので、水風呂というのが正しいかもしれません。
こうして、いろんな形で楽しめる美しい滝、Gibraltar Fallsも、キャンベラの魅力の一つ。ぜひ足を運んでみてください。
【2023年2月16日追記】
Gibraltar Fallsにて事故があり、2023年2月14日より調査のため遊歩道も含め、現在閉鎖中となっています。再開の状況はホームページで各自ご確認ください。
以上、キャンベラ在住であっても何度も再訪したくなる、あぁ、キャンベラって素敵なところだなと感じるアンカーになるであろう美しく心洗われる場所を厳選してお届けしました。
これらの場所が、あなたにとっての紫に少しでも染まることができれば、嬉しく思います。
それでは今日も素敵な夜と一日を。
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